リビングに入ると、にっこり笑うナナリーの姿。
そう、今日は元日。特別な日なのである。
ナナリーは桃色の着物で姿で、栗色の長いふわふわの髪には花の形をした髪飾り。
彼女のいう“日本風”とはこのことなのか。
キモノ姿を見てほほえむルルーシュ。
「あけましておめでとう、ナナリー。キモノ、よく似合ってるよ。佐世子さんが着せてくれたのかい?」
かくいうルルーシュの姿は、普段と変わらない。
新年を祝うという行事はブリタニアでもあるが、ルルーシュにとっては元日も昨日と変わらない今日なのだ。
だから取り立てて新年を祝うということはしていなかった。
「いいえ。佐世子さんは昨日から、ご実家に帰省してますわ。」
ん?、と顔をしかめる。
このクラブハウスに今いるのは、俺たち兄妹と・・・。
「キモノはC.C.さんが着せてくれたんです。私がキモノを着たいと言ったら、
手伝ってくださったんです。C.C.さんって何でもできる方なんですね。
お雑煮も一緒に。私はほとんど何もしていないですけど、作ってくださったんです。」
楽しそうに話すナナリー。
「そうだったんだね。」
思いとは裏腹に優しい口調で言う。
朝から姿が見えなかったのはこういうことか。
あいつ、ナナリーには絶対会うなと言っているのに!
「ね!C.C.さん。」
ナナリーが声を向けた先を見ると、C.C.の姿があった。
拘束衣姿ではなく、濃い紫色の着物姿で。
ライトグリーンの長い髪には蝶の飾り。
思いのほか似合っていたが、そんなことは口にださない。
「あけましておめでとう、ルルーシュ。」
「ああ、おめでとう。C.C.」
怒鳴りつけたい衝動に駆られるが、大切な妹の前である。
ここは、ふつうに友人として接しなければ。
「さ、揃いましたし、お兄さま、C.C.さん。一緒にお雑煮を頂きましょう?」
****
「これは一体どういうことだ?」
ルルーシュの部屋に響く声。
食事がひと段落したところで、C.C.を部屋に連れ込んだのだ。
C.C.はベッドの上に座り、ルルーシュは彼女の前に立ち怒鳴っている。
「新年早々うるさい奴め。」
質問の理由は答えず、そっぽを向くC.C.。
「ナナリーに会うなとあれほど言っているのに!どういうことだ?
それにお前が着ているキモノは?だいたい何で俺が予想していないことをするんだ?
フン、まったく・・・。そっちこそ新年早々問題をおこすな。」
一気にまくし立てたその時だった。
部屋の扉が開きナナリーが入ってきた。
「お兄さま、C.C.さんを責めないでください。
私がお願いしたんです。恋人であるC.C.さんとお兄さまと新年をお祝いしたいって。
だから・・・。」
いつのなく真剣なナナリーの訴え。
「わかった。怒鳴ってすまないC.C.。
ナナリー、これでいいかな?あとC.C.は恋人じゃないよ。」
謝りついでに誤解を解こうとしたが、
「いいんですよ?お兄さま」とにこにこと返されてしまった。
「では一緒に初詣に行きませんか?私、おみくじ引きたいです。」
「そうだな。午前中なら人も少ないだろうし。」
「C.C.さんも一緒に。」
「いいのか?私まで。」
「もちろんです。ね?お兄さま。」
「ああ。」
仕方ないさ、と言わんばかしなルルーシュだった。
****
どうして、日本の、神社は、どこも、高い場所に、あるんだ・・・
ナナリーを抱え階段を登るルルーシュ。
息も切れ切れである。
枢木神社よりは階段は少ないが、自分の体力の無さを感じる。
「お前の今年の抱負は体力をつける、だな。」
C.C.が横で言う。
「まぁ、C.C.さんったら!」
ナナリーはクスクス笑っている。
神社にお参りする人々のほとんどが日本人だった。
それもそうだろう、ブリタニアではそういう習慣はなかったのだから。
そうこうしている内に階段を登り終えた。
貸し出し用の車椅子にナナリーを乗せる。
「まずはお参りです。」の一言で一行は本殿の前に。
大きな鈴を鳴らし手を合わせる。
俺は神に祈らずとも自分で叶えてみせる、そんな思いだからなのか一番初めに祈り終えた。
ナナリーは願い事を口に出している。
「みんなが幸せに暮らせますように。」
目をあけて、横を見るとC.C.の姿。
両手を合わせ静かに祈っている。何を祈っているかわからないが予想はつく。
どうか、これが最後の契約になるように。
今まで何度も天を仰ぎ神にそう祈ってきた。
が、祈りは届かなかった。だから、これが最後の祈りになることを。
「心配するな。俺がお前の願いを叶えてやるから。」
真剣に祈るC.C.の姿を見ていたら、そんな言葉がこぼれた。
「ああ。」そういってC.C.は目をあけて祈りをやめた。
一言返事だったがその声は少し弾んで聞こえた気がした。
「次はおみくじです。」ナナリー念願のおみくじである。
「せーのっ!」3人一斉におみくじを開くと・・・
「む、ナナリーすごいじゃないか。大吉だぞ。何事も思い通りにいく、だそうだ。」
「ありがとうございます。C.C.さんは?」
「私のは白紙だ。何も書かれてない。こういうこともあるんだな。」
ひらひら、と何も書かれてない紙をながめるC.C.。
「お兄さまは?」
「ナナリーは大吉なんだね。俺は・・・、大凶。」
「あら、ではこうしましょう。」
ナナリーは自分のおみくじとルルーシュ、C.C.のおみくじを重ねた。
三重になった紙を細長く折っていく。
「これで枝に結んでください。」言われた通りに枝に結ぶ。
「私たちの運勢はこれで一緒になりました。」
明るく笑うナナリーに、ルルーシュもC.C.も暖かい気持ちになった。
「ではそろそろ帰ろうか。」
ルルーシュの言葉に2人がうなずく。
「はい!」
「そうだな。」
-------------------------------------------------------------------------------
今回は新年エピソードでした〜
最後までよんでくれてありがとなのです。
今年もよろしく!!