「これは決定事項だ。先ほどにも言ったが、議論したところで変更する予定はない。
騎士団内で食品の譲渡は禁止する。以上。」
ピリっとした雰囲気の中、ゼロの声が響く。
団員の中には反論する者もいたがゼロの意思は言葉通り固く、しぶしぶ納得するしかなかったのだ。
こう強く言われてしまっては何も言えない。
言ったところで何にもならない、ということは誰もがわかっていたことだった。
反義する声は各々の胸に秘めたまま、会議はおひらきとなった。
「あ〜あ、まったくやってらんねぇぜ!」
玉城がさっそく愚痴をこぼす。
「仕方ないじゃない。ゼロが言っていることは間違っていないもの。だいたいアンタはあってもなくても同じじゃないの?私の方が・・・」
カレンはゼロの意見に賛同派だが、いまいち腑に落ちてない様子だ。
他の団員も実際そうだった。仕方ないとあきらめてしまえば容易だが、期待もあった分あきらめきれていない様子だった。
「みんな、これは安全対策なんだ。わかってくれよ。」
扇が少し困った様子で話しかける。
最近、食品の毒入りテロが多発している。先の毒入り餃子事件は日に新しい。
騎士団の中でそういった事件は起こっていなかったが、いつどこで毒物が混入するかわからない。
そんなこともあり、騎士団内で食品の譲渡は禁止になったのである。
「はぁ・・・、チョコレート、ゼロに渡したかったのにな。」とカレンは心の中でつぶやく。
何もバレンタインの前日に禁止令を出さなくたって・・・。
そう思っている団員はカレンだけではなかった。
「おい、そんなに残念がらなくてもいいだろう?」
突然C.C.がカレンの目の前に現れた。彼女は続けて話す。
「だいたい毒が入ってなかったら問題ないんだろ?私が味見をしてやる。
ゼロに何か言われたら、私が毒見をしたと言えばいいさ。お前たち、早くもってこい。」
いつもはこんな風に言わないC.C.だったが、彼女たちを不憫に感じたのだろう。
C.C.に言ってみれば“ただのきまぐれ”らしいが。
「む・・・これはうまい。毒はない。次!」
C.C.の前にはチョコレート菓子を持参した女性団員が列をなしていた。
ラッピングを開放し、お菓子の一部をC.C.は毒見する。
「これも問題ない。次。」
毒見チェックを通過したお菓子を握り締め、女性団員はうれしそうに走っていった。
そんな様子を見ると悪い気はしない。
何人も毒見をし、ついにカレンの番になった。
C.C.は袋からチョコクッキーを1枚取り出し、一口食べる。
「・・・。毒はないが変わった味がする。ま、あいつなら喜んでくれるさ。」
「うるさいわよ。だいたいゼロにあげるとは決まってないわ。」
「私はゼロに、なんて一言もいってないぞ。」
C.C.がいたずらっぽく笑う。カレンは頬を赤らめてそっぽを向いた。
「さて、これで最後だな。」
最後に並んでいた団員の菓子をぱくりと食べる。
食べた瞬間、息が苦しくなってその場にしゃがみこんでしまった。
「C.C.!?」
カレンが傍に駆け寄る。
息ができない。手足に力が入らない。カレンの声も遠くなり、C.C.は意識を失った。
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ほんとはバレンタインにアップ予定だったんですがね・・・
お酒飲んでたらいつの間にか朝でしたよ。ははは・・・
つづきはまた明日アップします。お楽しみに〜